今から4年前になりますが、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙に、次のような研究結果が公表されました。
「2011年度にアメリカの小学校の入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」というもので、別の表現では、2027年頃には、今ある職業の65%は無くなっているだろう、というものでした。
65%という数字はアメリカを対象とした予測なので、実際、日本でそのとおりになるかどうかはわかりません。ただ国際化が進んでおり、雇用不安などの国際情勢は先進国共通の現象として起きているので、おそらく日本でも20年後は、多くの人々が、今わたしたちが想像したことのない職業に就いている可能性が高い、ということでしょう。
社会の変化のスピードがあまりに早いので、将来の職業がこれまでと同じように安定した存在であり続けことが少し難しくなりそうな勢いです。
わたしは、不登校で外来にお見えになる高校生にはよくこの話をしています。というのは、彼らの大半は、小学校から始まり大学へと積み上げていく方式の、伝統的な教育システムに、ついていけなくなっているからです。頭の良い子のなかには、しばしば、アスペルガーやADHDなどの傾向を持ち合わせているお子さんもいますが、直観力の高いお子さんの場合、結論が先に見えているので、将来の職業選択と現在通学中の学校のカリキュラムがマッチングしていない、としばしば訴えます。
大切なのは将来、自分の力で食べていくことです。その要になる職業が安定したものでない時代になれば、子どもが教育に求めるものも変化するでしょう。例えば、自分の心に働きかけてくれるような講義を求めるでしょうし、テストや添削を受けたり、質問をしたりすることが気楽にできる自由な感覚の学校を求めるようになるでしょう。もちろん、わたしたち精神科や心療内科にたずさわる人間も社会の流れに敏感である必要があるでしょう。