今から10年前、北欧の老年研究所から帰国したばかりの同僚研究者が話していた、
「赤ワインやインドの樹木から抽出した成分が老化を防ぎ、人を長生きさせるらしい」
そんな逸話を実現するかのような番組をテレビでみました*。
*6月12日 NHK特集 あなたの寿命は延ばせる ~発見!長寿遺伝子~
レスベラトロール (Resveratrol)は、赤ブドウの皮などにごく少量含まれる植物性物質で、副作用が少なく安全な抗酸化物質です。
ヒトの第10番染色体の短腕上には、寿命を伸ばす遺伝子サーチュイン (Sirtuin ) が存在しますが、レスベラトロールは、この遺伝子の働きをONにする作用があります。
このサーチュイン遺伝子はヒトの全身の細胞にあり、普段は眠ったままの状態ですが、
飢餓状態やカロリー制限をすると作動がオンになり、サーチュイン酵素を作り、この酵素が
老化防止に役立つ遺伝子だけを選んでスィッチを押すのです。その結果、サーチュインはヒトの体を若返らせ、いつまでも健康な状態にすることができるのです。
さて、レスベラトロールは、このサーチュイン遺伝子の量を増やし、サーチュイン遺伝子からつくられる酵素に作用して何回でも働かせるなど活性化を盛んにします。
つまり、レスベラトロールは、サーチュインの働きを強める作用があるため、結果として、がん・認知症・糖尿病・高血圧・動脈硬化・高脂血症・骨粗しょう症など老化が原因でおきる疾患の予防薬・治療薬として有効な可能性が高く、現在、世界中の大手の製薬メーカーが開発を競っているのです。
近い将来、生活習慣病を治して寿命を伸ばす、誰もが老化を遅らせて寿命を伸ばせる、
そんな夢のような時代がみえはじめてきました。