この方程式は、物理学の基本原理で、人生の積分公式と呼ばれるものです。
『その人の人生は、生まれてから死ぬまでの、努力 プラスアルファー の時間の積み重ねである』 と訳(やく)せるでしょうか。
わたしが、まだみなさんと同じ受験生だった頃に出会った人生の公式です。
「人生は、毎日の積み重ねの結果で決まる」 というこの方程式は、まだ10代だった私にとっても直観的に実感できるものでした。 積分値なので、たとえマイナスの時代があったとしても、決して負の 「人生」 なんてないんだ。という願いにも似た想いもあったのでしょう。
“人生が、今、この瞬間の努力の時間軸に比例するものならば、その人の幸せの大きさも、その時点での努力によって左右される” わたしはそう信じて疑いませんでした。
しかし、40歳を過ぎた今、たくさんの大人と出会うなかで、実は、この方程式が最も言いたかったことは、この 「α」 (アルファー)ではなかったのか、と次第に気づかされました。
受験生のみなさん、この「α 」(アルファー) とは一体、何だと思いますか?
実は、この「α」(アルファー)は、人生の“運・不運”のことなのです。
人は、どんなに一生懸命がんばっても、時として、どうしようもない不遇の時代や、まさかというような逆境に出会うことがあるのです。 問題は、その時に、どうやって、それを切り抜けたかで、その人の人生が決まるのです。
みなさんは、本当に真面目な若者です。 しかし、その真面目さが、時として、人生ではうまくいかない時があるやもしれません。 それが、親との確執や、不登校、ひきこもりであったり、受験の失敗や、就職の失敗、留年や失恋などの形でおとずれるかもしれません。
でも、その一つ一つに真面目に取り組むことが、実は、大切だったことに気づく時がやがてきます。 若いときの苦労は買ってでもしておくべきで、あとになって考えれば、大したことはないのです。 むしろ苦労した分、遅れた分、深くなること、そのことが大切で、四十を過ぎて不惑(ふわく)の歳になったとき、その人の真価を発揮するのです。