最近はたて続けに成人のADHDの診断希望が続きました。
期限内にやれないことや、人の話をさえぎってしまう、
先走ってしゃべってしまう、整理整頓ができず、
先延ばしもある、など、相談者自身が長年気にしてきた
自身の癖を述べられ、自分はADHDに当てはまるのではないか?
と心配されて来院されます。最近の傾向としては、どちらかというと、
診断を受けてスッキリしたいというかたのほうが増えているように思います。
もちろん上記の症状はADHDを疑う際の大事な所見ではありますが、
わたし自身は診断の際には、自尊感情の傷つき方の有無に、
より重点を置いています。
ADHDをお持ちのかたは、とにかく、ヒトからとやかく言われるのを
嫌います。ですが現実には、不注意症状や衝動性をもつために、
職場で注意や叱責されることが多く、上司からも相当な批判を受けているものです。
最近、お聞きしたなかでも印象に残っている上司からの言葉は、
「人間として問題がある」「君には反省がみられない」
「仕事をなめている」「まわりの空気を読みなさい」
「君を中心に世界が周っているわけじゃない」「社会人としての常識を持ちなさい」
など、言われたほうからしてみると仕事上の注意を通り過ぎ、もはや
人間否定されているかのような忠告を受けているケースが多いものです。
ですが、ここで上司によるパワハラと決めつけずに
慎重に経過を追っていくと、そんな上司も実は最初は親切にしてくれていた、
とか、よく飲みに誘ってくれていた、など良い記憶にたどりつくもので、
そういえば一緒に仕事をしだして、半年くらいたった頃から急に叱責が増えたとか、
無視されだしたとか、自分だけがターゲットに叱られだしたなど、
上司の未熟さによるパワハラだけではない、本人側にもそれ相応の
“周囲を怒らせてしまう” 因子があることに行き当たるのです。
実際大人のADHDをお持ちのかたは、職場適性が低いかたや、
サラリーマン社会とは異なる価値観を持ったかたが多いように思います。
そういうかたは、早期に診断を受けて、新しい物差しで生きていける価値観を
用意してあげないと、将来、解雇される可能性や、転職、離婚する可能性が高く、
それを繰り返すうちに、貧困化に結びついてしまうのです。
そのためADHDの外来は、決して甘い物ではなくなってきているのです。